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2018-03-28

トランスイマー蛇足観戦記!(ネタバレあるので要注意!

 こちらは観劇済みでネタバレバッチコイ! という奇特な方向けの記事になります。
 もし大阪公演でこれから見るのでフレッシュな気持ちで観たい! という方はこのままサイトを閉じてくださいませ。

 よろしいですか?

 では、skinpopの蛇足トランスイマー解釈メモw

 実は私は過去に頭部の病気をやって、一部分ですが記憶を失った過去があります。
 記憶喪失などと言うとドラマチックですが、実際は病気で集中治療室に入っている間、医師や看護師と会話したりコミュニケーションを取っているのに、それについて全く記憶がないというものです。

 その期間はおよそ10日間。

 その間になんと病室で東京都知事選の不在者投票も受けていますが、それすら全く覚えてません。
 しかし、私は病室で不在者投票する旨を看護師長さんにお願いして同意し、選挙管理委員会の方と看護師さんの立会いの下で指さしによる投票をしております。
 でも、まるっきり覚えてません。

 その事があって、脳神経内科の主治医と話している話題の一つに「人間の脳は「身体の味方」か? 「心の味方」か?」というのがあります。
 脳って何のためにあるの? 心は脳が作るものじゃないの? という漠然としたお話です。
 私の記憶がすっぱり無くなっているのは、脳の状態が良くなかったことが原因だとわかっています。
 細菌性髄膜炎という感染症に加え、脳膿瘍による脳圧の上昇、肝機能を含む全身機能の低下があり、脳は身体を生存させることを優先する為、機能の殆どを生存に全振りした状態と言えるものだったそうです。

 人間の感情や記憶、主に心と感じる部分は脳がつかさどっています。
 ですが、脳はその心の味方ではなく、身体が生存する為ならば、心を切り捨てることもあるのです。
 心は時に身体の敵です。精神的ストレスが身体を壊すのは良く知られています。
 トランスイマーの里子が悶える程苦しんだ恋愛トラウマ。これは明らかに身体に悪影響を出す可能性があるほどの「心の病気」だったと思うのです。

 故に、里子の脳は最後にはあの状態になってしまう。

 これ以上、里子が苦しむことは身体によくない。脳はそう判断すれば、簡単に原因を切り捨てるのだと思います。
 そして、それはもう思い出すことはできない。ドラマチックに記憶がよみがえるような事は無いのだと思います。
 実際に私の10日間は記憶が無くなったのではなく、脳が状態が良くないので記録を放棄した故の無記録なので、その記憶がよみがえることはないだろうと言われています。
 里子が苦しみ続けたあの試行錯誤も同じように身体を苦しめていたとしたら、脳がそれを記憶しないと言う事は十分にあり得ます。

 物語のラストでも、そこが抜けて記録を失った里子が、他の事を記録しようとして棚にいろんなものを乗せるけど、それがバサバサと抜けて行くシーンがあります。
 それこそがまさに、欠損してしまった記録部分であり、里子にとって苦しかったすべてだったんじゃないかなと思うのです。

 じゃあ、おちくんはどうなるの!? あまりにも救いが無くない!? と思ってしまいますが、思い出すことが全て良い事だとは限らないと思うのです。

 ドラマチックに出会って急激に進展した物語に里子は耐えられなかった。
 それで何もかも忘れてしまってリセットしてしまった。
 里子は二度とあの苦しかった時間を思い出さないのだと思います。

 でも、それは里子だけの話。

 里子は思い出せなくても、父や母や姉や恋人は里子が苦しんだことを知っている。
 そして、おちくんは待つと言います。
 思い出さなくても、もう一度物語を作る覚悟が彼にはあるのです。

 そっと、棚が戻されて、あたらしい記録が始まる予感を感じさせながら閉じられた幕にはそう言うものがあるのではないかんと思うのです。

 このトランスイマーというお話、記憶喪失とか夢とかってドラマじゃないんだからさぁって一概に言えないと思いません?
 そして、失われたものが取り返すことが出来なくても、人間はちゃんと幸せになれるかもしれないのです。

 失ったものに里子がこだわらず、何もないところから緩やかに再スタートを切る。
 彼女の中では初演、でも周囲の人間には再演。そんなドラマなのかなと思うと、より身近に共感できる気がします。

 記憶というのはそんなものなんですよ~と言うのを知ると、またちょっと面白いかなと思い、蛇足観戦記でした。

 さ! 大阪観に行きましょう!w

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